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あっち向いてホイ

創作や企画の呟き、落書き、アイディアなどが放り込まれるブログ

SS - アンダー・ザ・スカイ

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SS - アンダー・ザ・スカイ

――ディッツとラスカード、二人の冒険者。そして独りの少女銃士。




青空の下、丘陵地帯を駆けていく二つの影がある。
一つは眼鏡をかけた銀髪の青年、もう一つは竜の角を生やした長髪の青年。
後方からはヒル・オーストリッチ――通称:丘ダチョウの群れが土煙を上げて迫っている。
二人は丘の中に点在するせり立った巨岩の下で足を止め、岩壁にできた凹凸部分を利用して登っていく。
「――ラスカード、今だ!」
群れの先頭が巨岩のふもとを丁度通り過ぎようかという時、銀髪の青年が声を上げた。
ラスカードと呼ばれた青年の突き出された掌から複数の赤い輝きが零れ落ちる。
「“秘めし劫火よ、威厳を示せ”――!」
地面に落下したルビーの魔石が発火呪文を切欠にして大爆発を引き起こし、
丘ダチョウの群れを灼熱の爆風が襲った。
炎は二十羽を超える群れのほとんどを黒こげにし、
運よく生き残った丘ダチョウは頭上から投擲されたダガーの攻撃を受けて倒れていく。
「やっぱダチョウ狩りはこのやり方が一番楽だよな~」
銀髪の青年、ディッツが鼻歌混じりに軽い身のこなしで地面に着地。
「……お前が群れの発生ポイントをちゃんと見張れていればの話だ」
ややもたついた動きで地面に降りたラスカードが、ローブに付いた土汚れを払いつつ苦言を呈した。
「いやーさっきはたまたま、ちょっと目を離した隙に……」
「居眠りしていただろう」
「スンマセン」
ラスカードは狩りを手伝ってくれと言い出した当人が己の失敗をとぼけようとしたのを許さず、次はしっかり見張るようにと念を押した。
群れの発生ポイントをいち早く察知し、その行く先に回り込まなければ先ほどのような強襲は成功しないからだ。
このフィールドエリア一帯に生息する丘ダチョウは大小の群れをなして行動する習性を持っており、
一羽一羽は面倒なスキルも持たないレベル相応のモンスターだが、
数を相手にするとなるといかに手早く処理できるかの手腕が問われる。
ドロップアイテムであるダチョウの羽はクエストで大量に要求されるため、
プレイヤーの間では職の組み合わせやレベル帯によって様々な狩りの方法が生み出されていた。
二人の場合は今回のような強襲スタイルが定石で、
ディッツが冒険家のスキルを使用して変動する群れの発生ポイントを絞り込み、
ラスカードが魔石使いのスキルで群れを攻撃する。
高威力の魔法を内包した魔石を一度の発火呪文で複数使用できる魔石使いのスキルは、
魔石の作成に手間がかかるが瞬間火力ではゲーム内でトップクラスに入る。
その威力は起点を間違えなければ大きな丘ダチョウの群れを一掃できるほどで、
先ほどのような作業を何度か繰り返せば一気に羽を集めることが可能だ。
「さてと、景色を眺めて群れを待つだけの簡単なお仕事に戻りますか」
ディッツが一つ伸びをして歩き出す。
次の狩りにむけて見晴しの良いポイントに移動するのだ。
大きな群れの再発生にはいくらか時間がかかるため、それまでは景色を眺めるくらいしかやることがない。
「自分の役割を忘れるなよ」
「――ただし見張り役は除く、と」
ラスカードは気を抜けば簡単な仕事すらヘマを打つ相棒に釘を刺すのを忘れない。
移動中、グワーグワーという騒がしい鳴き声と発砲音に足を止める。
岩陰から隠れて見れば銃士が一人、丘ダチョウの群れ相手に孤軍奮闘していた。
遠目、それも複数の敵影越しには定かではないが、目に眩しいオレンジの髪にゴーグルを付けた銃士は恐らく少女の装いで、ダチョウにぐるりと周囲を囲まれて後退もできない状況下である。
「おーおー、結構無茶してんなー」
「ソロの銃士だと、ああならざるを得ないだろう」
この丘陵地帯は点在する巨岩を除けば見晴しが良く、
スキルの揃った銃士にとっては遮蔽物の少ない狩りのしやすいフィールドといえる。
しかし、遮るものが少ない分、モンスターに囲まれてしまうと隠れる場所もない。
「……あ、頭上に厄介なのが湧いた」
どこからともなくやってきた大型の蜂型モンスター、グリーン・ホーネットがバトルに参戦した。
スキル攻撃で毒のステータス異常を付与してくる上に、一匹湧くと次から次に仲間を呼んで数を増やす厄介なモンスターだ。
ホーネットは羽を高速振動させて仲間を呼び始めたが、銃士は丘ダチョウの相手で手一杯らしく頭上を見ようともしない。
「あの子、蜂が湧いたこと気付いてないっぽいな」
「あれだけ囲まれると、視界はエフェクトとスキル関係の情報で埋まるからな。敵の増加通知を見逃したんだろう」
群れに一人で挑むだけあって銃士のスキル威力は高レベルプレイヤーのそれだったが、
ホーネットの群れまで同時に相手をするとなると辛いものがある。
「助け船出してもいいか?」
お節介な眼鏡の相棒がそう言い出すであろうことは薄々予想できていた。
ラスカードが無言で頷くと、すかさずディッツが銃士にPT加入要請を送る。
このゲームでは横取り禁止対策として、
他のプレイヤーがバトル中のモンスターを外部のプレイヤーが許可なく攻撃することができない。
そのため、加勢する際は一時的にPTを組むのが一般的だ。
許可通知を確認するや否やディッツが岩陰から飛び出して行き、
上空を飛びながら仲間を呼び続けていたホーネットを投擲による攻撃で叩き落し、招集スキルを強制中断させる。
「もうちょっとこっち向いてくれませんかね、っと!」
複数同時攻撃スキルで銃士に向いている丘ダチョウの注目を集める。
ディッツが丘ダチョウの円陣を崩した頃に、ラスカードが最も敵影が密集した箇所へ魔石を投げ入れた。
「“来たれ、潔白を示す希望の雷”――!」
発火呪文を切欠に黄色いシトリンの魔石から眩い雷光が放たれた。
雷光は直撃した丘ダチョウの羽を焦がし、閃光を直視した敵から短時間視界を奪う。
「よっしゃ、チャンス到来! 攻めろ攻めろー!」
敵数も多けれど、こちらも高レベルプレイヤーが三人。
かけ声とともに目を潰された丘ダチョウとホーネットへ一斉攻撃をかければ、戦闘終了までそう時間はかからなかった。

遠目で見たとおり、銃士はやはり少女だった。
「あんた、ダチョウの羽集めしてるなら一緒にPT組まないか? そっちの取り分多めで構わないからさ」
狩りを終え、ディッツがドロップ品の配分を確認しようと近づいたついでに銃士へ声をかける。
「……あなたとはPTを組めません」
うつむいた少女から言葉はか細く、注意しなければ聞き漏らす声量だった。
「そっか。じゃあ、今の戦闘のドロップ品、俺の分もやるよ」
ディッツがアイテムの受け渡しをしようと近づくと、また少女が後退した。
「あれ? 要らないのか?」
「ぼ、ぼくのことは放っておいてください」
そう絞り出すように言うと、身をひるがえして走って行ってしまった。
「……PTを組まないというより、“組めない”類いの人種のようだな」
自分の分のドロップ品の回収を終えたらしいラスカードが、遠ざかる華奢な背中を見て呟く。
不特定多数のプレイヤーが集うアクロスエンドだが、
当然、ゲームをプレイしている者全員が他人とのコミュニケーションを得意としているわけではない。
内向的で人との接触を苦手とする者も何割かおり、協力すれば楽に終わるクエストを全て一人で片付けようとする者も少なくなかった。
「まあ、ちょっと引っ込み思案っていうか、まだ距離感掴めてないだけだろ」
「いや、あれは……話しかけてやらない方が親切だと思うぞ」
少女から人を避けようとする根深い何かを感じとったラスカードが、ディッツを横目に歩き出す。
「そんなことねーって! ……だってホラ、昔のお前もあんな感じだったじゃん?」
ディッツは先を行く相棒に追いつくと横に並び、昔の話を持ち出した。
二人は現実(リアル)でも知り合いで付き合いが長い。ランドセルを背負い始める年頃からお互いを知っている。
「お前もいつも隅の方で、一人で平気です、みたいな顔して黙々と過ごしてたけどさ。
俺が遊びに誘うと嬉しそうに付いてくるようになっただろ?」
「……随分昔の話をする」
振られた思い出話の記憶を辿るように、ラスカードの視線が虚空を彷徨う。
「要はさ、他の奴との過ごし方さえ分かれば一緒に楽しく遊べるんだよ。
まあ、楽しくなるまで時間かかるかもしんねーけど」
言い終わって間もなく、ディッツが次の群れの発生ポイントを見つけたと言って駆け出したので、
ワンテンポ遅れてラスカードもその背中を追いかけた。
「――お前は有難迷惑という言葉を知らないんだろうな」
苦笑いして漏らした言葉は走り出したディッツに聞こえていたのかいなかったのかわからないが、
きっと聞こえていても何も変わらないのがこの困った世話焼きの生き方なので仕方がない。
ラスカードは昔も今も変わらない、親友の背を追いかけて行く。


<End.>


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腐れ縁二人の今昔と、一人の少女との出会い話でした。

レグにん。との出会い話書くぞ!と始めたものの、いざ振り返ってみたら
ディッツとラスカードの普段の光景と昔馴染み情報の方が多いという罠。
書き始めた当初はもう少し後が続く内容だったけど、落としどころに迷いが生まれ
筆が進まなくなってしまったのでキリのいいところで切り上げました。
仕上げることが大事なのだ・・・・・。(自分に言い聞かせている)

ディッツとれぐにん。の出会いはやはり、世話焼きな眼鏡のお節介からだろう!
ということでネトゲでは定番な出会いの仕方になりました。

れぐにん。の狩場とか立ち回りとか、いろいろツッコミどころあるかと思いますが、
どうか許してください_(:3 」∠)_
他プレイヤーとの接触を好まないれぐにん。が
横槍PT申請を快く受理したとは考えにくいので、今回のはきっと乱戦中で操作ミスしたんでしょうね。
ダメージエフェクトやらスキルのクールタイムやら何やらでごちゃごちゃしてる中で、
視界に出てきた申請通知(一番上に表示されるので邪魔)を速攻処理したら誤って許可ボタンの方を押してた・・・みたいな。
ディッツはよかれと思って助け船出したつもりですが、裏で智樹くんにさんざん文句言われるといいよ!

ともあれ、AEで新たに始まる心機一転ボーイ・ミーツガール(?)は
片方の心象最悪の出会いから開幕、ということで・・・!!

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日々アホなことを考えつつネタ探しに奔走するズボラー(だらしのない人間)。
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