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SS - マキエの迷い路【前編】

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SS - マキエの迷い路【前編】

――期間限定ダンジョン、巨大迷宮に冒険家が挑む。



冒険者の方々、マキエの巨大迷宮へようこそおいでくださいました。
私はこの迷宮の管理人、フェゴールと申します。
常に変化し続ける迷い路を踏破した暁には、古き迷宮に隠され貯蔵された宝物にありつけましょう。
中でも私が収集している珍品の類いを入手されたならば、
私のちょっとしたコレクションと交換して頂きたいのです。
ただしお気をつけなされよ。
管理人の私でも、其処では何が起きるかわかりませぬ。
厄介な仕掛けと仕組みを持った迷宮ですが、
腕のある冒険者ならばきっと、私の求める物を手に無事帰ってきてくださると信じております――。
〔期間限定イベント『巨大迷宮の宝物を探せ』 案内文より抜粋〕


***


期間限定で解放されたイベントダンジョン、マキエの巨大迷宮。
その迷宮の踏破記念としてランダムに付与される報酬の中には、
入手難度の相場からすれば破格のアイテムがラインナップされているとの報告があり話題を呼んでいた。
中級~上級者向け難度の迷宮は、“常に変化し続ける”という謳い文句が示すとおり、
進むたびに刻一刻と変化していく仕組み(ギミック)を持っている。
内部にはAEに実装されているダンジョンの中では抜きんでて様々な仕掛けが施され、イベントならではというような生態系を無視した多種多様なモンスターが闊歩し冒険者の行く手を阻む。
そしてこの迷宮の存在を際立たせている特徴は、
プレイヤー単独でしか進入することができないことだ。
迷宮の攻略難易度を上げる極め付けの要素だが、括りは共有ダンジョンとなっているため、
運が良ければ内部で他のプレイヤーと合流できる可能性がある。
あとはPTを組むなり何なりして一緒に攻略できれば、
攻略難易度を下げることができるというわけだ。

「……んなこと言ってもよぉ、運頼み過ぎだろこの仕様」
同じ迷宮を攻略中の親友とボイスチャットで会話しながら、
ディッツは石壁でできた薄暗い道を一人で進んでいく。
『難易度と報酬は比例する。
 そう簡単に甘い汁にありつけたらゲームバランスが崩壊してしまうだろう』
ディッツの耳にだけ聞こえる声はボイスチャットの相手、魔石使いのラスカードのものだ。
二人同時刻に単独でそれぞれ迷宮に進入し、近況を報告し合いながらここまでやってきた。
「そうなんだけどよ、せめて“この先どう進めば他のプレイヤーと
 合流できそうだ”くらいの情報はあっても良くねーか?
 俺、直近3回とも単独攻略で詰んだぞ」
メインジョブが冒険家のディッツは、
周囲の仕掛けに気づく確率が上がるパッシプスキルや罠解除スキルを所有しているため、
本来ならばこういった変化する要素の多いダンジョン攻略では重宝される方の存在だ。
しかし今回のように単独で進まなくてはならなくなると、何をやらせても
頭一つ抜きんでたものがない冒険家の器用貧乏さが欠点として色濃く出てしまう。
厄介な高レベルモンスターという障害を突破するだけの攻撃力を持ち合わせていないため、
逃げ場のない狭い通路でエンカウントしてしまうとそこで攻略終了となる可能性が大となる。
その欠点を補うには他のプレイヤーとの合流が望ましいものの、
上手く迷宮の奥まで進めている時ほど合流できた試しがない。
故に攻略を始めてからこのかた、ゴールまで辿り着いたことがない。
『まあ、確かに。
 ……ディッツ、僕はそろそろ中間地点を過ぎる。通話はここまでだ』
「お、まじかよ早いな。――幸運祈ってるぜ!」
迷宮攻略中、プレイヤーが確認できるマップ情報は自身が通ってきた道のごく一部と、
自分が迷宮の出口までどのくらいの距離にいるかの目安だけ。
距離の目安といっても、一本の平坦なバーに自分の進捗位置が矢印で示されているだけで、
それ以上の情報など何もない。
そのゴールまでの距離が中間地点を過ぎると、他者との連絡ツールが使えなくなる。
チャットはテキスト・ボイス共強制的に使用不可設定へ。
メッセージは受け取りのみで発信できなくなり、
難易度の高くなる攻略後半の攻略情報等を誰かに仰ごうにも孤立無援となるのだ。
これもまた、迷宮の厄介な仕掛けのうちの一つ。
どうやら通話越しの親友は先に中間地点を過ぎたようで、以降の会話は途絶えてしまう。
「俺の方ももう少しで中間過ぎんだけどなー……問題はこの先なんだよな」
この迷宮は刻一刻と変化する。
ただの一度も同じ道順で進めることがなく、
ゴールまでの距離もダンジョンに潜る度に変化する。
だからというわけではないが、暗闇の中を一人で進んでいると
運悪く一番長い道のりを歩かされている気分になる。
と、身体が地鳴りのような振動を察知した。
ガラガラと重い岩が崩れ落ちるような、そんな音がどこか遠くから聞こえてくる。
それは頭上から急速に近づき、
ディッツが危険を感じ後退しようとした時には頭上の石壁が崩落していた。
「うっわ、あっぶねえ!!」
間一髪で落ちてきた天井の一部と瓦礫を避けることに成功し、ほっと溜息を吐いたのも束の間。
瓦礫の中に人影が紛れていることに気づき、上から一人のプレイヤーが落ちてきたのだと知る。
「……あんた、大丈夫か?」
土埃を吸い込んだのか、地べたでけほけほと咳している影へ手を差し出す。
それは小柄な少女で、傍らに落ちた銃装備を見るに銃士だった。
橙色の髪は薄暗がりでくすんでしまっているが、
陽の光の下で見れば目に眩しいオレンジ色をしているに違いない。
「……う、……えっ!?」
ディッツの声掛けにびくりと身体を震わせた少女は、恐る恐るといった様子で手の主を見、
次いで顔を背けて壁際まで高速で後ずさりした。
「あれ? もしかして、どっかで会ったことあるか?」
一瞬だったが少女の顔を確認できたことで、ディッツの脳裏に記憶がよみがえってくる。
あれは確か――。
「そうだ、丘ダチョウ狩ってた時に会ったことあるよな?
 あの時は羽渡しそびれて悪いことした、ごめんな」
壁際で震えている少女は俯いたままで返答はない。
「あれ? 覚えてない、か? ……まあ、一瞬だったしな。
 名前も知らねー相手のこと覚えてる方が難しいか」
以前として相手は何も話さないが、人が苦手そうだったという記憶を頼りに会話を試みる。
「俺、ディッツ。冒険家やってんだ、よろしくな」
仕切り直して自己紹介。
握手のために再び手を差し出すも、空振りに終わる。
「えーと……ここで会ったのも何かの縁だし、PT組んで一緒に奥目指さないか?」
「…………ぼくのことは、放っておいて、ください」
ようやく口を開いた少女の言葉は拒絶だった。
運よく他のプレイヤーと合流できたのだ、
ここで組んでおけば攻略が幾分か楽になるのは互いに明白なはず。
されど、弱弱しい口調の「放っておいて」の部分には力が滲んでいるように聞こえて
ディッツは頭を掻く。
「そう、か。……あ、でも、この先一本道だぜ?」
少女と合流する切欠となった崩落により、これまでディッツが進んできた道は塞がれ
退路は失われてしまっていた。

残されたのは奥へと続く一本道。
薄暗い道の先は未だ見えない。


<To be continued.>


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ようノ また会ったな!

ということで、
相棒の「ブルーインパクト」公開を受け熱が上がってきていますので、
遅筆の筆者にあるまじき早さで、でつれぐの次話をUPですよ。
完成するまで少しかかりそうな分量になりそうだったので、公開の鮮度重視で分割しました。
次に続きます。


▼【マキエの巨大迷宮】
〔イベント期間限定解放〕〔ダンジョン区分:共有〕〔進入時人数制限:一人〕
単独進入のみ許可。PTを組んでいる場合は解除しなければならない。
ただし、共有ダンジョンのため、侵入後に内部で他のプレイヤーと合流する場合がある。
内部で出会ったプレイヤーとPTを組むことは禁止されていない。

プレイヤーが進入時に設定された中間地点(正確には踏破距離)を過ぎると、
外部との通信手段の使用が禁止される仕掛けがある。
その他にも常設ダンジョンとは一線を画す仕掛けが随所に施されており、
プレイヤーのレベルと攻略スキルと運を試される迷宮となっている。

ゴールとして設定された地点まで辿り着き無事脱出できれば、
踏破記念報酬として、いくつかラインナップされている中からランダムで
アイテムが一つ入手できる。
そのアイテムが迷宮の管理人・フェゴールの求める珍品だった場合、
フェゴールの持っている交換リストから任意のアイテムと交換することができる。
交換リストの内容は、鉱石セット、鍛錬素材セット、
過去イベントで入手可能だった限定アクセサリなど、
迷宮踏破後の報酬として相応しい見返りが手に入るものとなっている。
しかし中には低確率で上級プレイヤーが唾をのむ貴重な復活アイテムや、
武器鍛錬成功率大幅UPアイテム(イベント限定品)が報酬として直接入手できることがあり、
果敢に迷宮に挑む廃人プレイヤーはそちらを目的にしている者も多い。

今回のイベントで初めて公開された期間限定ダンジョン。
イベント期間は約3週間。次回の解放の有無や解放時期は未定。
フラグメンツワールドに浮かぶ浮遊島の一つに立地。
せり立った大地をそのまま掘り出し迷宮の入り口を付けたような外見をしている。
内部は基本石でできた壁で道が続いているが、
神殿に似た広い空間や川が流れている場所などが確認されている。
古代の神秘によって迷宮の内部構造は常に変化しており、
また、どこからやってきたのか不明なモンスターたちが跋扈している。
周囲の環境は石畳にも関わらず水辺に生息するモンスターと遭遇したとの報告もあり、
まさしく何が起きても不思議ではない空間となっている。

管理人のフェゴールは小奇麗な初老の男性の姿をしているが、
どこか人ではない雰囲気を漂わせている。
ちなみに、迷宮は彼が作ったものではなく、
彼が資産として所有している古代遺跡という扱いである。

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日々アホなことを考えつつネタ探しに奔走するズボラー(だらしのない人間)。
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