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あっち向いてホイ

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SS - マキエの迷い路【後編】

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SS - マキエの迷い路【後編】

――期間限定ダンジョン、巨大迷宮に冒険家たちが挑む。攻略の結末や如何に。





獣の声。鋼と鋼のぶつかる音。そして銃声が迷宮の通路に響く。
オレガノは刀で斬り込み最前列の敵の進行を抑え、ディッツは投擲武器とバフスキルで後方支援、れぐにん。は後衛からの銃による遠距離攻撃で敵を確実に仕留めていく。
三人でPTを組んでから何度か敵と遭遇したが、流石にグレーターデーモン×2などというトンデモ案件には出会うことなく、戦闘は問題なく切り抜けられている。
迷宮の通路は幅が広くないため、大物武器を持った前衛が一人暴れると残りのメンバーは後方からの支援を余儀なくされがちだ。
その点このPTは前衛が一人、後衛が一人、前~中衛タイプの職が一人ずつでバランスが良い。
合流時にオレガノが口にした通り、なるほどこの面子ならば迷宮の攻略達成に十分期待が持てる。
獣人モンスターの襲撃を一掃し終えた一行の視界のバーが示す迷宮踏破率はゴール目前の頃合いだ。
「俺、今回が今までで一番、迷宮の奥まで進めてるわ」
「最後まで気ぃ抜くなよ。経験からして、端に着いて脱出するまでが一番厄介だからな」
ディッツが自分の視界に表示されている踏破率を眺めながら口笛を吹き出しそうな機嫌で言い、
それをたしなめるようにオレガノが忠告する。
「やっぱり、手強いボスとか倒さないとダメなのか?」
「まあな。人数とレベルで選別されてんのかもしれねえが、
 これまで十中八九ボス級の敵がいやがった。
 正面から戦って倒すか、手際よく迷宮の仕掛けを解いて早々に脱出するかだな」
いよいよゴールに近づいている事実が各々のテンションを上げているのか、
初対面同士のPTでも会話が増える。
既に迷宮攻略の達成経験のあるオレガノを中心に、
ディッツらの突発成り行きPTはそれなりのまとまりを見せ始めていた。
「そういや銃士のお前、レベルとスキルはそれなりにあるみたいじゃねえか。
 力量は奥手な見かけ通りじゃなくて安心したぜ。この迷宮、クリアしたことはあんのか?」
「……え。……いや、ぼくは……」
二人から一歩も二歩も下がった位置を保っていたれぐにん。にオレガノが話を振るも、
最後まで言葉にすることなく、れぐにん。は口を閉ざしてしまう。
合流当初と比べて言葉を発するようになったものの、
控えめと評するには小すぎる声は語尾が尻切れトンボになることが多い。
「潜るのは何回目なんだ?」
「えと…………、いっぱい、です……」
少しの間をおいての返答だった。試行回数を数えてみたものの、どうやら途中で止めたらしい。
挑戦回数は想像以上のもののようだ。
「一人じゃなかなか難しいよな。俺なんか合流できても上手く行かなくってさ。
 なんでこんな仕様になってんだよ! って運営に悪態つきたくなるだろ?」
「……うん」
ディッツのフォローに対し、珍しくれぐにん。から言葉が発せられた。
出会ってこの方、PT申請を断られた時以外で初めて会話が成立したことにディッツは驚く。
この大人しい少女はオレガノが質問を振れば答えることもあったが、
ディッツとの会話はからきしだったのだ。
運営への悪態に思わず同意してしまいたくなるほど、この迷宮に手こずっているということなのだろうか。
「でもさ、このPTなら行ける気がするよな。
 俺たちと一緒なら、今度こそクリアできるって!」
少女の俯いた顔を見かねたディッツがさらに励ましの言葉を続けたが、
それに対しては再び無言の姿勢が返ってくるのだった。
「ゴールまで辿りつけねえのは、人を避けてるからだろ。
 この迷宮、自分からPTの呼びかけができねえ奴にはおあつらえ向きの仕様だ。
 どんな連中でも迷宮内で他の奴と合流できたらラッキーだと思って
 自然にPT組めるようになってるってのに、それでも組まねえ奴の気がしれねえな」
じっと俯いてしまった少女を横目に、オレガノが煙草を片手に溜息をもらす。
「なあ、あんた。あの子に対してあんま冷たいこと言うなよ。
 怖がってるかもしれないだろ?」
「……ああん? アホなこと言ってんじゃねえ。
 こんな何が起こるのかわかんねえビックリダンジョンに単独入って来て中盤越えてくる奴が、
 か弱い人間なわけあるかよ」
オレガノは少女のアバター外見と振舞いに囚われすぎだと言って、ディッツを鼻で笑う。
「案外、お前より図太い奴かも知れないぜ?
 裏じゃお前のこと、もっと働けよ、って息まいてるかもな」
「いやいや、流石にそれは想像できないわ。
 ……ってか俺は俺なりに頑張ってるし! その言い方はひどくね!?」
「お前の幸運UPスキル、恩恵あんのかねえのかわかんねえし」
「……それは冒険家の仕様です……」

雑談と共に進んできた迷宮も、いよいよ最終盤に差し掛かった。
視界のバーが示す踏破率は限りなく100%に近い。
三人が足を踏み入れた終着点は、石造りの広大な空間だった。
太い石柱が並ぶ長方形の空間の端には何かを祭った祭壇が配され、
等間隔に置かれた松明による明かりが祭壇と、その脇に控える異様な石像を暗闇の中に浮かび上がらせている。
「げ、これって……!?」
見上げれば首が痛くなるほどの高さに頭部のある石像は
アクロスエンドでも屈指の固さを誇るボス級モンスター、ジャイアントゴーレムである。
祭壇の守護神――いや、見張り番とでも称するべきか。
三人の気配を察知して起動した見張り番は、低い地響きのような音を立てて身体を起こす。
古の魔術によって作られた岩の巨人が、神聖なる場から侵入者を強制排除しようと動き出した。
「チッ、よりによってこいつか……!」
敵影を確認したオレガノが刀を構えて舌打ちをした。
一戦交えたことのあるプレイヤーなら、あの動く石像には物理攻撃が通じにくいことを身に染みて知っている。
アレには魔法などの高威力な属性攻撃による攻撃が攻略の最適解――というか、物理防御力が高すぎてそれ以外の攻撃ではHPがほとんど削れないのだ。
「おい、この中にアイツを倒せる策を持ってる奴はいるか?」
皆一様に手持ちの装備を確認するも、オレガノの発した問いに答えられる者はいなかった。
職業柄ディッツもオレガノも物理攻撃を主軸としており、生憎属性攻撃には向かない装備で来ている。
唯一期待したのが銃士の属性攻撃だったが、
ゴーレムのHPを一人で削り切るには相応の銃弾数と回復アイテムが必要となる。
無論、銃士をサポートするPTメンバーにも回復アイテムの残量が無ければ話にならない。
ディッツとオレガノは銃士の少女に視線を向けたが、当のれぐにん。は無言でうつ向いている。
ということは、現状ではゴーレムに挑んだとしても時間稼ぎが関の山だ。
まともに相手をしたら全滅する。しかし、迷宮はここで行き止まり。
「――冒険家、道を探せ!
 広間のどこかに出口に通じる通路があるはずだ。多分巧妙に隠されてるやつがな。
 その通路を使えばボス討伐後のポータルが無くても、とっとと迷宮からずらかれる」
「わかった、探してみる!」
迷宮踏破の達成報酬を入手するには、ゴール地点に到達後、
定められた手段でダンジョンを脱出しなければならない。
一つは他のダンジョンとも共通の手段、
設定されたモンスター――ボス級モンスターである場合が多い――を倒した後に出現する
ワープポータルを使ってダンジョンの外へ出ること。
そしてこのイベントダンジョンにはもう一つ脱出手段があり、巨大迷宮の終着点に隠された出口に続く秘密の通路からでもダンジョンを脱出することができるようになっていた。
ただ、その通路は一見しただけではわからない場所に隠されており、
探索系のスキルを持たない職のプレイヤーにとって発見はかなり難しい。
「銃士は俺と、あのデカブツの相手だ。
 探索を邪魔されてあの眼鏡が死んだら詰みだからな。こっちに引きつけておくぞ」
「……は、はい……!」
オレガノがゴーレムの気を引くために真っ先に攻撃をしかけに走り、その後方に位置取りをしたれぐにん。が、一人に攻撃が集中し過ぎないよう銃撃でけん制をかける態勢へ入った。
オレガノのメイン職である侍は、前衛職とはいえさほど防御力の高い職ではない。
むしろオレガノの場合は素早さを上げるために軽量の防具を選んで装備しており、
ボス級の攻撃なら運が悪ければ一撃で戦闘不能に陥りかねない。
防御力が低いのは銃士のれぐにん。も同様で、壁となって攻撃を引き受けるタンク役や補助系スキルでPTの生存率を上げる仲間なしの状況でゴーレムと真正面から戦うのは綱渡りともいえる行為だ。
二人で場を持ちこたえられるのはもって十数分が限度だろう。以降は戦闘が維持できなくなり、ゴーレムにPTごと全滅させられてしまう。
通路の探索に長い時間をかけられないことはディッツも承知の上、
冒険家の〈シャープセンス〉スキルを発動し、隠された仕掛けを探る。
「――おい、まだか!」
余裕のない戦いを強いられているオレガノから催促の声があがる。
「探索する空間が広すぎる、まだかかりそうだ!」
周囲の探索が得意分野の冒険家といえど、スキルで一度に探索できる範囲は限られている。
構造物の違和感を感じ取ることのみに注力し、探索範囲に漏れがないよう慎重に移動していくが……。
「おっと、……嘘だろ?」
ディッツの額に嫌な汗が流れる。眼前に探索開始に目印にした柱があった。
何も収穫を得られないまま、探索開始の起点にした位置に戻って来てしまったということだ。
「――だめだ! 一周したけど何も見つからない!」
「馬鹿野郎、冒険家のテメエが見つけられなきゃ他の誰が見つけられんだよ!
 もっとよく探せ!!」
報告を耳にしたオレガノから怒号が飛ぶ。
スキルの使用中は十分集中していた。うっかり見逃したなんてことはない。
ディッツの頭の中が焦りと混乱で渦巻く。
探索系スキルとしてはゲーム内随一と評価されているスキルを持ってしても、
気づけないほど隠蔽率の高い仕掛けということなのか。
もしかすると出口に辿り着くためのもっと違う方法が用意されていたのかもしれない。
だが、視界に表示されているPTメンバーのステータス変動は別のやり方を探る時間がないことを表している。
回復効率の良い回復アイテムを使い切ったのか、
二人のHP・MPの回復が目に見えて鈍り始めた。
これから戦闘に加わったところで冒険家の戦闘力は他の前衛職に一歩も二歩も譲る。
習得済みの補助スキルも現状を打破できるようなものは持ち合わせていない。
もう自分にできることはない、お手上げだ――。
「……早くして!」
広間の空気を割いて響いた声が誰のものかわからず、ディッツは周囲を見回した。
あの無口な少女から発せられた声だった。
これまでで最もはっきりとした声量で放たれた言葉にはっとする。
「今度こそクリアできる、って、……言った!」
れぐにん。は、自身の背丈の半分以上あるかという長さの銃を手に息つく間もなく立ち回っている。
ゴーレムの攻撃によって破壊され散った石畳の瓦礫に足をとられ転倒しても、
よろけながら起き上がり銃を構えて戦い続けている。
その姿は一瞬諦めの念を抱いたディッツを奮い立たせた。
今回の攻略を成功させられるかどうかは自分の腕にかかっているのだ。
迷宮で出会った彼らの協力に報いなければ。
そして何より、これまで一度も迷宮をクリアしたことがないというあの少女に
勝ち星を送ってあげたかった。
焦りでになっていた頭を落ち着かせるために深呼吸をして、もう一度空間に視線を走らせる。
松明の明かりが届かない広間の四隅、柱と柱の間、厳かな祭壇。
――本当にすべて探し終えたのか?
自問自答の末、ディッツは一つの仮説を試すために前線へ身を乗り出した。
〈シャープセンス〉を発動して注視した先は、岩の巨人だった。
「お前の役割は探索だろうが! 出しゃばってくんじゃねえ!」
ゴーレムを避けて行動していたディッツが突然その攻撃範囲に飛び出してきたのを
オレガノが見咎めたが、間もなくして答えを掴んだディッツが勢いよく叫んだ。
「――あった! 見つけたぞ、出口の“仕掛け”! ゴーレムの頭だ、額の紋章がスイッチになってるんだよ!
 攻撃をヒットさせれば、多分何かが起こる!」
侵入者を排除しようと動き続けるゴーレムの額には古の魔術による紋章が刻まれていた。
スキルで感じ取った感覚に間違いがなければ、紋章には何かが隠されている。
この広間で隠すものといったら、脱出用の出口しか考えられない。
「……はァ!? このデカブツが迷宮の仕掛けの一部?」
オレガノとれぐにん。がゴーレムの頭部を見上げた。
刃を交えていた相手が仕掛けを持っていたことに驚きを隠せない様子だ。
「れぐにん、紋章を狙い撃ちしてくれ!」
銃を握り直した少女はディッツの指示を仰ぐまでもないといった様子で、
狙撃の位置取りをするために駆け出した。
「オレガノ、まだゴーレムの陽動できそうか?」
「誰に向かって言ってんだ、眼鏡。お前に任せておけるかよ。
 ――“堅固符”、決!」
自己強化スキルである符術使用句を唱えたオレガノが、懐から取り出した符を刀で二分する。
自身の防御力を一時的に上昇させ、ゴーレムの攻撃を受け止める算段だった。
背の高いゴーレムの額を狙い撃ちするには広間の中央部におびき寄せなければ十分な射角が確保できず、誘導した後は位置取りした銃士の正面にゴーレムを留め置かなければ、小さな的への正確な射撃は難しい。
「強化符は今ので最後だ。効果が切れたら流石にもう間はもたねえぞ、手早く決めろよ!」
探索時間を稼ぐため既に満身創痍のはずだが、このオレガノという男は“引き受けたからにはやり遂げる”という意気込みがあるプレイヤーだった。
ゴーレムの気を引き中央へおびき寄せたディッツと入れ替わりに重い攻撃を受け止め、
ターゲットの身体の位置が左右にぶれないようにわざと回避行動を最小限にして対峙する。
その後方には銃を構えたれぐにん。の姿。最速で狙いを定め、引き金を引く。
一発の銃声が響き、弾丸がゴーレムの額に着弾。紋章から青白い輝きが放たれる。

――そして、広間の崩壊が始まった。

天井を構成していた岩が次々に落下していく中、停止したゴーレムを背に三人は広間に出現した新たな通路――待望の出口に向かってひた走る。
通路を目の前にして勢いを増した天井の崩落が、三人を飲み込もうと迫ってくる。
途中、人の頭ほどもある岩が頭部を掠めた衝撃で、
一番通路の入口の近い位置にいたために先頭を走る形になっていたれぐにん。が地面に倒れた。
「う、………っ!」
「大丈夫か!?」
立ち上がろうとして上手く起き上がれずにいるれぐにん。に、
駆けつけたディッツが肩を貸し支え起こす。
遅れて追い付いたオレガノもそれに手を貸し二人三脚のようにして急ぐが、
今度は落下してきた岩に肩をぶつけたオレガノが膝を着いた。
出口が岩に埋もれるまで、もう幾ばくの猶予もない。
ディッツはまだ足がもつれているれぐにん。を直ぐ様に背負うと、オレガノを置いて走り出した。
「なっ、てめえ――!?」
「悪い! 先に行かせてくれ!」
直後、落石の影でオレガノの姿が消えたがディッツは走る足を休めなかった。
通路に入ってからも崩落は止まることなく続き、入口が埋もれると通路まで順に崩れ出す。
人が二人並んで歩けるかどうかの幅しかない上り坂をゴールの光に向かって駆け上がる。
喉をカラカラにしながら崩落の波を振り切って眩い光へ飛び込んだ。
気が付くと、迷宮の入り口の反対側、出口の広場に立っていた。
迷宮脱出成功を知らせる『Congratulations!!』の表示を視界に認めて、
ようやく張りつめていた緊張が解けて声を上げた。
「よっしゃーー! 初クリア!!」
ディッツは嬉しさのあまり、背から降ろしたれぐにん。の手を無造作にとり、手を繋いで万歳する。
と、その背後に一人の影がゆらりと近づいた。
「……よう。さっきは見捨ててくれてありがとよ、クソ眼鏡。お陰で強制退出できたぜ」
口にくわえた煙草の紫煙と一緒に嫌味を吐き出したオレガノの姿を捉えたディッツの表情は
一気に気まずさに強張ったものになった。
その目元がサングラスの下に隠れて表情が分かりにくいといっても、踏破目前で迷宮から強制退出させられたオレガノが不機嫌なオーラをまとっているのはビシバシと伝わってくる。
「あ、あれに悪気はなかったんだよ……!
 ……あんたはもう何回かクリアしてるんだろ?
 俺たちまだ一回もクリアしたことなかったから、どうしてもクリアしてみたくてさ。
 気づいたら咄嗟に身体が動いてたっていうか……。
 何が言いたいかっていうと、お世話になったのにすみませんでした……!!」
「世話になった自覚はあんのか。なら、報酬の山分け7:3で許してやるよ。
 念のため言っとくが、俺が7だ」
平謝りするディッツに、働き分の報酬を寄越せと手が差し出される。
「あの、クリア報酬のアイテム1つしかもらってないんですけど……」
「取り分多い方が貰ってくって、相場が決まってんだろ?」
「で、ですよねー……」
目じりにうっすらと涙を浮かべつつ、ようやく手にできた迷宮の踏破報酬をオレガノに譲渡した。
さようなら、迷宮の秘宝。
俺の迷宮攻略はまだまだ始まったばかりだ――!
頭の中でそんなエピローグを流しつつ、報酬片手に去っていくオレガノの背を未練がましく見送って暫しの後。
そういえばもう一人の達成報酬は何だったのだろうと興味が湧いて銃士の少女の姿を探すも、その姿は忽然と消えていた。
入れ代わりに同時刻に迷宮攻略を始めた親友が現れたので、
その場で二人で攻略の報告会となる。
「ずいぶん時間がかかっていたようだが、どうだった?」
ディッツの親友、ラスカードは普段と変わらぬ涼しい面持ちで結果を問う。
「おう、俺もようやく念願の初クリアよ。
 ……譲っちまったから、達成報酬は何もねーけど!」
「やれやれ……お前はまた、骨折り損のくたびれ儲けか」
眼鏡でお調子者のこの親友は、また何かやらかして自分の利益を他の者へ譲ることになったのか、とラスカードは呆れ声を漏らす。
しかし、ディッツの表情は晴れやかだった。
確かに達成報酬はあっという間に自分の手から他所へ移ってしまったが、
迷宮攻略で得られたものはアイテムだけではなかったからだ。
「いや、そうでもなかったぜ? 誰かの喜ぶ顔ってのもさ、立派な報酬だろ? 」
出口の通路を抜けた先。
暗がりの中で鬱々としていた少女の瞳に、
出会って初めて明るい光がきらめいたのを思い返してディッツは喜ばしげに笑った。


〈End.〉

-------------------------------------------------


……ようやく完結しました迷宮攻略。

中編アップした日付を確認したら、一カ月前になっていて眩暈がしました。
二週間そこらで書き上げるつもりでいたはずなのに、
月日経つの早すぎ&私の筆遅すぎですねスミマセン……。


今回の話の舞台や作中の登場人物の行動は、
ディッツとれぐにん。の関係性を意識しながら書きました。

「迷宮=れぐにん。が抱えている私生活面での悩み、囚われ抜け出せない負の檻」
を表しており、れぐにん。が迷宮をクリアできない(問題を解決できない)のは、
オレガノに言わせてみれば 『ゴールまで辿りつけねえのは、人を避けてるから』。

迷宮内で他のプレイヤーと合流するというのは、他者と出会い、
交流の機会を得ることであり、
迷宮をクリアするための助力を得る絶好の機会なわけですが、
れぐにん。は他のプレイヤーと関わりを忌避しているために、
独りでは迷宮を出られずにいつまでも迷い続けている……というわけです。

前編~後編において、ディッツがれぐにん。に対してとった行動の一部は、
二人の関係性(今後のこうなっていけばいいなという妄想含む)への比喩があったりします。

最初は拒絶され、しばらく交流もなく過ごしていたけれど、
何らかの切欠によって会話する接点が生まれ、
ちょっとした話題でなら会話が成立するようになる。
そしてディッツがれぐにん。の手を引っ張って走る終盤の脱出劇はそのまま、
れぐにん。が問題解決できるようにディッツが手助けするようになることの比喩です。

あとはもう自分であれこれ指摘するのもあれなので、
これってもしかしてこういうことを表しているのかも?とか探して楽しんでみてください。
(グダグダ)

AEでの二人の関係がこの先、
喩え話ではなくそんな風になっていけばいいな~という妄想でした!



//------------------ 以下、恒例の補足情報 ------------------//

▼【ジャイアントゴーレム】ーモンスター
ボス級モンスター。古の魔術によって作られたタフな岩の巨人。
身長は(配置場所にもよるが)5mを軽く越え、圧倒的な質量でもってプレイヤーを散らしにかかってくる。
AEでも屈指のHPと物理防御力を持ち、物理武器による通常攻撃ではほとんどダメージを与えられない。
ボス級モンスターとしての高HPも相まって、物理メインの職泣かせモンスター。
反面、土属性以外の属性攻撃に対する防御力は低く、
強力な属性攻撃手段を持つ魔法系職がいれば攻略難度を下げられる。
倒すまでの間、ゴーレムの攻撃を凌ぐだけのHP回復手段や防衛手段がなければ厳しいが、
物理攻撃メインの職でも属性付きの武器やスキルで攻撃すれば勝機はある。
PT戦では属性攻撃のアタッカーを守り生かして戦うのが定石。

・地の鉄槌〔物理攻撃〕
拳を思い切り地面に叩きつけ、広範囲に地面を揺らすほどの衝撃波を起こす。


>「まあ、人数とレベルで選別されてんのかもしれねえが、これまで十中八九ボス級の敵がいやがった。
 正面から戦って倒すか、手際よく迷宮の仕掛けを解いて早々に脱出するかだな」

マキエの巨大迷宮の最終地点の配置モンスターと脱出の仕掛けは、
最終地点に到達したPTメンバーの人数や職構成によって内容が選択される。
特定要素により100%選択されるほどのものではないが、少なからずバイアスがかかっており、
それはプレイヤーがあまりにも理不尽な内容の最終地点に挑むことがないようにとの配慮が含まれている。
(例えば、今回のような物理職構成のPTに探索を得意とする職がいなかった場合、
 モンスターを倒せず隠し出口も見つけられず脱出不能となってしまうため、
 ジャイアントゴーレムのような物理職のみでは倒しきれないモンスターは配置されない)
(ただし、それはあくまで最終地点に限っての話であり、
 道中で遭遇するモノについてはほどほどに理不尽だったりする)
これについて運営側からの明確な言及はないが、攻略組のユーザーによって、
ある程度そういう要素があるのではないか、という話題は持ち上がっている。


> 「――あった! 見つけたぞ、出口の“仕掛け”!
 ゴーレムの頭だ、額の紋章がスイッチになってるんだよ!」

迷宮の最終地点の仕掛けは内容が変動するため、
次回、再び同じ祭壇の広間とゴーレムの最終地点に辿り着いたとしても、
仕掛けが同じ場所であるとは限らない。
今回三人が辿り着いた最終地点は、複数ある組み合わせの中でも攻略難度が高く、
仕掛けを解いた後の脱出難度も高めだった。


> 直後、落石の影でオレガノの姿が消えたが、ディッツは走る足を休めなかった。
広間の天井崩落はただの演出ではなく「プレイヤーの脱出を阻む罠(トラップ)」という扱いのため、
落石に当たればプレイヤーの行動が阻害される上、
完全に岩の下敷きになった時点で「迷宮内の罠によって死亡した」とみなされ
強制的に迷宮の外に退出させられる仕組みになっている。

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日々アホなことを考えつつネタ探しに奔走するズボラー(だらしのない人間)。
得意技は大言壮語と自給自足。
ないなら自分でつくればいいじゃない。

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